ダイエットを成功させるには、食事でとるカロリーよりも、消費するカロリーのほうが多くなければなりません。それには、自分が一日にどれくらいのカロリーを消費しているのかを知り、食事でとるカロリーがそれを上回らないようにすれば良いのです。
人は、特に運動もせず安静にしている状態でもカロリーを消費しています。心臓を動かす。呼吸をする。汗をかくなど、生命を維持するのにエネルギー(カロリー)を使うことを基礎代謝といいます。基礎代謝量より摂取カロリーが少ないと、生命活動に支障をきたすため、いくらカロリー制限が必要だといっても基礎代謝を下回らないようにしなければなりません。基礎代謝量の求め方はいくつかありますが、「ハリス・ベネディクト方程式」では以下のようにして計算します。
女性 665+(9.6×体重Kg)+(1.7×身長cm)-(7.0×年齢)
男性 65+(13.7×体重Kg)+(5.0×身長cm)-(6.8×年齢)
この計算は欧米人体型に合わせて作られていますので、日本人の場合はもう少し基礎代謝量が少なくなります。
例)30歳女性 身長160cm体重50Kgの場合
基礎代謝量=665+(9.6×50)+(1.7×160)-(7.0×30)=1207
基礎代謝以外にも、無意識的に消費しているカロリーがあります。食事に伴う消化吸収の過程で消費するエネルギー(カロリー)で、食事誘発性熱産生といいます。食べたものによってカロリーの消費量が異なりますが、だいたい一日あたり200kcal消費しているといわれています。つまり、生命を維持するためには最低(基礎代謝量+200)kcalはとらなければならないということになります。
そのほか、仕事やショッピングで歩いたり、肉体労働をすることでもカロリーを消費しています。一日に消費するカロリーのうち、基礎代謝量はだいたい60%くらいになるといわれていますので、(基礎代謝で消費するカロリー+食事誘発性熱産生200kcal)÷0.6が一日に摂取できるカロリーの上限となります。
例)30歳女性 身長160cm体重50Kgの場合
基礎代謝量1207+食事誘発性熱産生200=1407kcal
1407kcalが一日に最低とらなければならないカロリー
上限は、1407÷0.6=2345kcal
つまり一日に摂取するカロリーが1407kcal〜2345kcalの間であれば、ダイエットに成功する計算になります。
すなわち、(基礎代謝で消費するカロリー+食事誘発性熱産生200kcal)から(基礎代謝で消費するカロリー+食事誘発性熱産生200kcal)÷0.6の範囲であればいいわけです。
ただし、カロリーにとらわれすぎてしまうと、つじつまを合わせることばかりに気をとられてしまい、食事の内容がおろそかになってしまいます。特に、女性が失敗するダイエットで多いのが極端に肉類を制限し、春雨スープや、コンビニのおにぎり中心の食事にしてしまうことです。たんぱく質をとらずにダイエットをすると、生命維持に必要なたんぱく質が不足してしまいます。すると、体は筋肉を分解することでたんぱく質を補おうとするため、「太ももが細くなった!」と喜んでいても、実際に減ったのは脂肪ではなく筋肉だった、ということになりかねません。また、「やせるときは、胸からやせる」と言う人も多いと思いますが、大胸筋がたんぱく源として使われてしまっている可能性があります。
その他の失敗では、「春雨しか食べていないから少しくらいおやつを食べてもいいはず」と、つい甘いものを食べてしまったりすることもあげられます。自分では少ししか食べていないつもりでも、意外に糖分を多くとっていることが多いのです。特に、甘いものと一緒に清涼飲料水を飲んでいると一日に角砂糖十数個分の糖分を摂ることになります。甘みがうすく感じられるスポーツドリンクにも糖分が沢山入っていますので、ビタミン、ミネラル補給のつもりで水の代わりに飲むのは逆効果です。
糖分を摂りすぎると、その時使われなかった分は肝臓で脂肪として蓄えられます。そのため、食事を少ししか食べていないのにやせないという人は、気づかないうちに糖分を沢山とっている可能性があります。
また、糖分を一度にとりすぎると血糖値を下げるために大量のインスリンが分泌されます。すると、一気に下がりすぎた血糖値を再びあげるためにアドレナリンやノルアドレナリンといったホルモンが分泌されます。アドレナリンやノルアドレナリンは攻撃、怒りなどの感情をつかさどるため、ダイエット中にイライラしやすくなり、リバウンドの原因になってしまいます。さらに、何度も血糖値が急上昇したり急降下したりしているうちに、インスリンが分泌されても血糖値が下がらない体質になってしまい、通常より大量のインスリンが分泌されるようになります。これをインスリン抵抗性といいます。インスリンは、脂肪細胞を拡大させる作用があるため、ますます太りやすくやせにくい体質になってしまうのです。インスリン抵抗性は、脂肪の多い食事でも起こります。
○GI値の低いものを食べましょう
食品を摂取したときの血糖値の上がり具合を数値化したものをグリセミック・インデックス(GI)といいます。ブドウ糖を100として、相対的に評価します。GI値が低いほど、血糖値が急上昇しにくい食品になります。砂糖はGI値が高いので、風味付けにはメープルシロップ、調理には羅漢糖などの人工甘味料を使うなど工夫をしてください。どんな食品でも、GI値が低いからといって大量に摂ってしまうとよくありません。
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高GI値食品(GI値70以上) |
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中GI値食品(GI値60〜69) |
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低GI値食品(GI値59以下) |
【糖類】
食パン |
91 |
精白米 |
88 |
もち |
85 |
うどん(乾) |
85 |
ベーグル |
74 |
そうめん(乾) |
67 |
パスタ(乾) |
64 |
中華麺(生) |
60 |
玄米 |
55 |
ライ麦パン |
55 |
そば(乾) |
53 |
【野菜・豆類】
じゃがいも |
90 |
にんじん |
79 |
山芋 |
75 |
かぼちゃ |
65 |
さつまいも |
55 |
トマト |
30 |
大豆 |
30 |
大根 |
25 |
小松菜 |
23 |
ほうれん草 |
15 |
【肉・魚介類】
ベーコン |
49 |
ハム |
45 |
牛肉 |
45 |
豚肉 |
46 |
鶏肉 |
44 |
あじ |
44 |
ほたて |
41 |
しらす |
40 |
いか |
40 |
いわし |
39 |
【乳製品・卵】
生クリーム(無糖) |
38 |
チーズ |
32 |
卵(生) |
30 |
バター |
30 |
牛乳 |
25 |
ヨーグルト(無糖) |
25 |
【果物】
パイナップル |
65 |
バナナ |
55 |
ぶどう |
50 |
メロン |
41 |
オレンジ |
30 |
【糖類】
上白糖 |
99 |
黒砂糖 |
93 |
はちみつ |
75 |
メープルシロップ |
73 |
人工甘味料 |
10 |
○おすすめはちょこちょこ食べ
食べたものが糖に変わる速さは糖質>たんぱく質>脂質の順です。血糖値の急上昇を避けるためには、ゆるやかに糖に変わるたんぱく質や脂質を少量ずつ、一日数回に分けて摂ったほうがよいのです。そのため、理想的な食事は一日五食です。お仕事上、どうしても三食しかとれない場合は、10時ごろと3時ごろにおやつをとりましょう。もちろんおやつは甘いものでなく、ゆるやかに血糖値をあげるチーズやナッツ、プロテイン飲料などです。
○太りにくい順番で食べましょう
血糖値の急上昇を抑えるには糖質の少ないものから食べて、徐々に血糖値をあげるようにしましょう。まず、糖分の吸収を抑える作用のある食物繊維から食べます。つまり野菜や海藻類です。次にたんぱく質を含む肉・魚・卵・豆腐・豆類(甘い煮豆以外。納豆など)→糖質を含むいも類・白米→デザート。どうしても外食をしなければいけないときは、この順番で食べるようにすると、血糖値の急上昇を抑えることができます。
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