疲労と栄養

 
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慢性疲労と栄養

○ビタミンB群不足
「どんなに寝ても疲れが取れない」「睡眠時間をたっぷりとっても夢ばかり見て熟睡した感じがしない」「休日にゆっくり休んでいても疲れる」「肩こりがひどい」「筋肉痛が長引く」このような経験はありませんか。

疲労を回復するにはエネルギーが必要ですが、食べたものをうまくエネルギーに変換できないと、たまった疲れを回復することができなくなってしまいます。エネルギーを生み出すのは、脂質、糖質、たんぱく質です。これらの栄養素をエネルギーに変換するのがTCAサイクル(クエン酸回路)という仕組みです。
体内に取り込まれた脂質、糖質、たんぱく質は、TCAサイクルという回路を経て体内で分解され、最終的に二酸化炭素と水になって体外に排出されます。この過程で、エネルギーの源となるATPという物質が生成されるのですが、この回路を順調に回し、沢山のATPを作るにはビタミンB群が必要なのです。つまり、ビタミンB群が不足していると、どんなに休んでもエネルギーが作れないので、疲れが取れなくなってしまいます。また、脳内でメラトニンという睡眠のコントロールをするホルモンを作るにもビタミンB群が必要となるため、ビタミンB群が不足していると眠りが浅くなったり、睡眠時間をたっぷりとっても夢ばかり見て熟睡した感じがないということが起こります。
ビタミンB群をたっぷりとると、夢も見ずにぐっすり眠ることができます。
「ビタミンB群を摂っているのに夢を見る」という人は、量が足りていない可能性があります。
一日3回サプリメントなどで補う以外にも、寝る前に充分なビタミンB群を摂っておくと夢を見ることが少なくなってきます。

副腎疲労症候群

体が極度のストレスにさらされると、副腎という臓器が疲れきって、次のような症状がおこります。

  • ・朝なかなか起きられない
  • ・何事にもやる気がおきない
  • ・塩辛いものが欲しくなる
  • ・性的欲求が湧かない
  • ・風邪をひきやすい
  • ・喘息、食物アレルギーなどのアレルギー症状がある
  • ・ストレスを感じると胃が痛くなる
  • ・とにかく疲れがひどい
  • ・休日はベッドに寝たきりのことが多い

副腎は腎臓の上にある2〜3cmの小さな臓器ですが、この小さな臓器で生命維持に必要な働きの多くを担っています。
血糖のコントロール、性ホルモンの分泌、抗炎症作用、胃酸のコントロールなどの他、ストレスに対抗する働きがあります。単純に精神的なストレスだけではなく、寒暖の差、満員電車、ケガ、病気などの肉体的なストレスがかかったときにも副腎は働きます。

○疲れた副腎を休めるために、ホルモンの無駄遣いを減らしましょう
副腎には、皮質(ひしつ)と髄質(ずいしつ)という部分があります。
体がストレスを感じると、副腎髄質からアドレナリンやノルアドレナリンが分泌されます。アドレナリン、ノルアドレナリンは、自然界の生物が捕食者から逃げるときや闘争のときなど、生命の危機を感じたときに分泌されるホルモンで、心拍、血圧を上昇させ、攻撃(現代社会ではストレス)に対抗します。

また副腎皮質からはコルチゾールというホルモンを分泌して血糖値を上昇させます。
健康な状態のとき、コルチゾールは一日の中で分泌量が変化します。目が覚めて身支度を整え、出勤するという活動の多い午前6時から8時に最も分泌が多く、その後徐々に分泌量が減っていきます。ところが一日を通して強いストレスにさらされていると、コルチゾールが一日中分泌されることになり、しまいにはコルチゾールを使い果たしてしまうほどに副腎が疲労します。副腎には性ホルモンの分泌、抗炎症作用、胃酸のコントロールなどの働きがあることをお話しましたが、副腎が疲れきっているとこれらの働きも弱くなるため、性欲の減退、アトピー性皮膚炎やアレルギー性鼻炎、喘息、風邪をひきやすく治りにくい、ストレスによる胃痛などの症状がおこり、とにかく疲れて仕方がないのです。血糖値を急上昇させるような高GI値の食品をとると、コルチゾールを無駄遣いすることになり、余計に疲労感が強くなりますので、糖質を控えた食事をするようにしましょう。また、コルチゾールを合成する際には、ビタミンCとビタミンB群が必要になります。副腎は、ビタミンCの消費量が多い臓器ですが、副腎疲労症候群になっている人は、とくにビタミンCの消耗が激しいため積極的に摂ってください。

やる気を出すために栄養ドリンクを飲む方もいると思いますが、栄養ドリンクにはカフェインと糖分が含まれています。一般的には「眠気をさますにはカフェイン」「疲れたときは甘いもの」と思われていますが、カフェインも糖分もアドレナリンやコルチゾールの分泌を促進して血糖値を急上昇させます。その結果、神経が高ぶり、一時的にやる気がでるような錯覚に陥るだけなのです。栄養ドリンク以外にも、コーヒーや緑茶、紅茶、ウーロン茶などのカフェインが入った飲み物は慢性疲労を増強させるため、控えましょう。コーヒーはカフェインレスコーヒーに、お茶は麦茶やほうじ茶に変えると良いでしょう。スポーツドリンクなどの清涼飲料水にも糖分がたくさん含まれている場合がありますので注意が必要です。

うつと栄養

近年、心のトラブルを抱える人が増えています。うつやパニック障害、統合失調症などで心療内科を受診する人の中に、明らかに栄養不足が原因の人がいます。栄養不足を改善すると、それまで何種類も服用していた睡眠薬やうつの薬を減らすことができるようになります。うつが改善して薬が全く必要なくなってしまうこともあります。
栄養不足のパターンをおおまかに分類すると以下のようなタイプに分けられます。

  1. 1.低血糖症(糖質過多が原因)
  2. 2.ビタミンB群・鉄分・たんぱく質不足
  3. 3.腸粘膜が弱っている

1.低血糖症
低血糖症とは、血糖値が安定しないことが原因で体調不良になる病態です。
単に血糖値が低いことが問題ではなく、血糖値の下がり方やその後のあがり方のパターンが通常とは異なる場合を低血糖症と呼びます。糖尿病で血糖値を下げる薬を飲んでいる人が、薬の作用で急に血糖値が下がってしまい、頭痛、動悸、ふるえ、冷や汗、めまいなどの症状が出る事を低血糖発作と呼びますが、ここで説明する低血糖症は糖尿病による低血糖発作についてではありません。

糖質は、脂質、たんぱく質と並んで三大栄養素と呼ばれています。その理由は、体内のエネルギーになる物質だからです。心臓を動かす。呼吸をする。筋肉を動かすなど、生命を維持するにはエネルギーが必要です。そのため、体内のエネルギーをいつも一定にしておくこと、つまり血糖値を高すぎず低すぎず一定に保つことは生きていく上でとても大切なのです。

ごはんを食べると、誰でも血糖値が上がります。でも、体には血糖値を一定に保とうとする働きがあるので、血糖値を下げる物質を出して、血糖値を調整します。それが、インスリンというホルモンです。
通常、食事をすると食後1時間〜1時間半で血糖値がゆっくり上がり、インスリンの働きによって、食後3〜4時間で空腹時の血糖値へと徐々に下がっていきます。

ところが糖質の多いものを沢山食べると血糖値は一気に急上昇してしまいます。体は慌てて血糖値をさげようとしますので、インスリンを大量に放出します。すると、今度はインスリンを出しすぎてしまったために血糖値が一気に下がりすぎてしまいます。お話したとおり、血糖値が低いということは生命の危機です。そのため、頭痛、動悸、ふるえ、冷や汗、めまいなどの症状が現れます。これが低血糖症状です。体は再び血糖値を上げるためのホルモンを出して、心拍、血圧を上げ、再び血糖値を上昇させます。そのときに使われるホルモンが、アドレナリンやノルアドレナリンです。アドレナリンやノルアドレナリンは、自然界の生物が捕食者から逃げるときや闘争のときなど、生命の危機を感じたときに分泌されます。そのため、恐れ、怒り、不安、焦燥感、筋肉のこわばり、思考の停止などが起こるのです。

毎日のように甘いお菓子や清涼飲料水、白米をとっていると、血糖値が急上昇と急降下を繰り返し、そのうちに血糖値の調節がうまくいかなくなります。その結果、うつやパニック障害のように感情が不安定になってしまいます。コーヒーや緑茶、栄養ドリンクなどカフェインの多い飲み物をよく飲む人も、アドレナリンの分泌が増えてしまいますので、コーヒーを飲む人はカフェインレスコーヒーに、緑茶を飲む人はほうじ茶か麦茶に変えるとよいでしょう。

2.ビタミンB群・鉄分・たんぱく質不足
うつの人には「セロトニン」という物質が不足しています。セロトニンという言葉をテレビなどで聞いた事がありますか?一体セロトニンとはどんな物質なのでしょうか。
脳には感情などを伝える神経の細胞があり、その細胞同士は神経伝達物質を通して信号のやりとりをしています。セロトニンは神経伝達物質の一種で、神経伝達物質には他にドーパミン、ノルアドレナリンなどがあります。ドーパミンは興奮、快楽などの感情を、ノルアドレナリンは興奮、攻撃、不安などの感情を支配しています。セロトニンにはそれを抑える働きがあります。セロトニンの原料は必須アミノ酸のトリプトファンです。トリプトファンが脳内で鉄、ナイアシン、葉酸、ビタミンB6などの栄養素とともにセロトニンを合成します。つまり、これらの栄養素が不足しているとセロトニンを作ることができないため、うつ状態になるのです。

さらにセロトニンからはメラトニンというホルモンが作られます。メラトニンは睡眠をコントロールするホルモンです。セロトニンが足りないとメラトニンは合成できないため、うつの人は不眠症を伴う事が多いのです。セロトニンがメラトニンを合成するにはマグネシウムが必要です。

3.腸粘膜が弱っている
口から入った食物は、胃で胃酸や消化酵素によって分解されると小腸へ運ばれます。
そこでさらに消化酵素で分解され、小さい分子の栄養素として小腸粘膜から吸収されます。
ところが、小腸の粘膜がもろいと栄養素の吸収が障害されるため脳のトラブルが起こります。小腸粘膜のもろさは次のような原因によっておこります。
(1)栄養不足
(2)腸内細菌のバランスが崩れている

(1)栄養不足
小腸の粘膜は代謝が早く、2〜3日ごとに新しい粘膜に生まれ変わります。そのため、小腸にがんの芽などができても多くは悪くなる前に粘膜ごと剥がれ落ちてしまいます。胃がん検診や大腸がん検診があるのに小腸がん検診がないのは、小腸粘膜の代謝が早いということも理由のひとつです。
栄養が不足していると、新しい粘膜があり合わせの材料で作られるため、弱くてすきまだらけになってしまいます。粘膜が丈夫で密になっていれば糖分がゆっくり吸収されますが、スカスカだとすみやかに吸収されてしまうため血糖値が急上昇してしまいます。すると、インスリンが大量に分泌され低血糖症になってしまうのです。
小腸の粘膜を丈夫にするには、鉄、亜鉛、ビタミンA、たんぱく質を十分にとる必要があります。

(2)腸内細菌のバランスが崩れている
腸内には100兆個もの腸内細菌が棲んでいます。
腸内細菌にはビフィズス菌やアシドフィルス菌などの善玉菌と、ウェルシュ菌などの悪玉菌、また、腸内環境が悪くなると悪玉菌に変化する日和見菌(ひよりみきん)がいます。
日和見菌は、健康なときには悪さをしませんが、抗生物質やステロイド剤の服用で善玉菌が死んでしまったり、体調を崩して悪玉菌が優勢になると悪さをする菌で、日和見菌のひとつにカンジダがあります。
カンジダに感染すると、腸の粘膜が破壊されてスカスカになるため糖分がすみやかに吸収されやすい状態になってしまいます。さらにカンジダは糖分をエサにして繁殖するため、ますます腸の粘膜が弱くなるという悪循環に陥ってしまうのです。
腸内細菌のバランスを整えるには、まずカンジダの繁殖を防ぐために糖分を控えること、善玉菌を増やすために乳酸菌を摂取すること、そして悪玉菌が優勢にならないように食物繊維をとって便通を良くすることが大切です。乳酸菌はヨーグルトの他に、ぬか漬け、キムチ、みそなどの発酵食品に含まれています。また、オリゴ糖は乳酸菌のエサになりますがカンジダのエサにはなりませんので、発酵食品と一緒にとると善玉菌が増え、便通も良くなります。

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